最近、世間を賑わせている「改正給特法」。ニュースでは「50年ぶりの大改正!」「教師の給与が上がる!」なんて言われていますが、その裏には、現場の教員が抱える切実な思いと、行政側の思惑との大きなギャップがあるのが現実です。
文科省が描く「改革」の姿
まず、文部科学省が今回の改正で目指しているのは何か、確認しておきましょう。
2025年6月11日、参議院本会議で公立学校教員の給与特別措置法改正案が可決・成立しました。この改正の柱は、教職調整額(残業代の代替手当)を現行の基本給の4%から、2031年までに段階的に10%まで引き上げるという点です。この教職調整額の引き上げは、1972年の給特法施行以来初めてのことやな。文科省は、これにより教員の待遇を改善し、優秀な人材を確保したいと説明しています。
文科省の公式見解としては、今回の改正は「学校における働き方改革の更なる加速化」「学校の指導・運営体制の充実」「教師の処遇改善」を同時に実現し、教師が日々いきいきと子供たちに向き合える環境を整備するためのものだとされています。文科省は、この改革を「50年ぶりの給特法見直しで教員の働き方改革を本格化し、待遇面でも報いる一歩」だと説明している状況です。
現場教員の「本音」と行政との深い溝
しかし、今回の改正には「焼け石に水」「見かけ倒し」という声が圧倒的に多いのが実情です。私の周りでも、不安や不満の声が目立っています。
残業代なしはダメ
一番の問題は、教員に時間外勤務手当(残業代)を支給しない「給特法」の仕組みがそのまま残されたことです。調整額が10%に上がったところで、結局は「定額の手当で、好きなだけ残業させるための免罪符が大きくなるだけ」としか感じられません。労働基準法の原則から外れたこの制度が温存される限り、長時間労働の根本解決にはならないと、日本労働弁護団も強く批判しています。
業務量は減るの?
「月平均30時間」という目標値が掲げられても、肝心な業務量が減らなければ、実態は変わりません。むしろ、「管理が厳しくなれば、働いていても先にタイムカードを押して帰ったことにする『隠れ残業』が増える」という声が多数上がっています。これでは「数字のマジック」に過ぎないと指摘されています。
やっぱりお金じゃない
多くの教員が口を揃えるのは、「肝心なのは人数と業務量であり、お金ではない」ということです。給料が多少増えても、授業準備や子どもと向き合う時間が足りなければ、本質的な教育はできません。「仕事量を減らすか人手を増やさないと残業削減の目標は達成できない」「給料より教員を増やしてほしい」という切実な要望が現場からは出ています。
SNSでも「#お金より人を」というハッシュタグが使われ、多くの教師に共感を呼んでいます。調整額アップよりも「部活指導員を増やして」や「外部支援スタッフをもっと入れてほしい」といった、人手不足解消への要望が根強いのです。
オンライン署名「『働かせ放題』『やりがい搾取』を解決しない政府案の給特法“改正”案に反対します!」には、短期間で4万件以上もの賛同が集まりました。これは、多くの教員が今回の改正に懐疑的であり、残業代支給の実現や教員定数の抜本増を求めている何よりの証拠だと思います。SNSでも「#定額働かせ放題」「#お金より人を」といったハッシュタグが飛び交い、現場の悲鳴が可視化されています。
教員側と行政側の主張の違いまとめ
文部科学省(政府)と教員側の主な主張・見解の違いをポイントごとに整理します。
残業代と勤務時間の扱い
【行政側】「時間外勤務を命じない原則」(残業代ゼロの仕組み)を維持しつつ、教職調整額の率を上げることで対応。月30時間程度の努力目標を掲げたが、法的な時間上限制は導入せず。
【教員側】時間外労働に正当に賃金を支払うことと労働時間の上限規制を強く要求。4%が10%になっても“残業代込みの定額”であることに変わりなく、長時間労働は減らないと批判。残業代支給の原則へ転換するよう主張。
人員増強と業務削減
【行政側】教員定数の明確な増加策は今回本体には盛り込まず(附則に検討事項として記載)、まずは業務効率化や管理体制整備(主務教諭設置や計画策定義務)で乗り切ろうとしている。
【教員側】業務の見直しだけでは限界であり、教員一人当たりの仕事量を減らすには定数改善しかないと繰り返し訴える。直ちに教員増員策を講じるよう要求しており、この点で現場と行政の温度差が顕著。
「主務教諭」の評価
【行政側】学校マネジメントの中核と位置づけ、組織的な働き方改革を進めるキーパーソンになると期待。主務教諭制度は現場の萎縮や分断を招くとして否定的。
【教員側】職階を増やすよりまず現場全体の余裕を作ることが先決と主張し、条例化阻止まで打ち出されている。
待遇改善の実効性
【行政側】教職調整額10%への引上げは「50年ぶりの画期的な待遇改善」であり、教員不足対策の一助になるという認識。
【教員側】見かけ上の数字が上がっただけで、実際には手当削減などもありプラスになっていないと指摘。特に特別支援教育関係では実質減給のケースもあり「士気が下がった」との声もある。
教育の質への影響
【行政側】今回の改革で「教師が活き活きと子どもに向き合える環境整備」を目指す。少人数学級の推進など子どもにメリットのある施策も強調。
【教員側】長時間労働の放置は教師の心身を壊し、結果的に子どもの学習権を損なうと警鐘を鳴らす。教師の余裕の無さが子どもへの悪影響を生むため、教育の質向上には教師の働く環境の抜本改善が不可欠と主張。
このように、文科省(行政側)と現場教員たちの主張には大きな溝があるのがわかります。文科省は「まずは制度を整備し数値目標を掲げて改革を進める」というトップダウンのアプローチですが、教員側は「現場の実態に根ざしたボトムアップの改善(人員と労働条件の抜本是正)なくしては絵に描いた餅だ」という考えです。
今後の見通しと課題
給特法改正により制度上の第一歩は踏み出されましたが、教員の働き方改革と給与制度見直しはこれで終わりではありません。今後の展望として、以下の点が注目されます。
残業代支給制への移行の含み
財務省が当初提案していた「時間外勤務手当の支給制度への移行」は、今回の改正では具体化されませんでした。しかし、財務省は引き続きその可能性を視野に入れていると見られます。法附則に掲げられた残業時間「月30時間程度」への削減目標が達成され、将来的に月20時間程度まで短縮が実現すれば、財務省は改めて給特法の抜本見直し(残業代支給への転換)を主張する可能性があります。
一方、教員側の労働組合も「給特法が長時間労働を招く構造的問題を解消できていない」として法の廃止・抜本改正を求めています。
附則事項の着実な履行
法附則に盛り込まれた残業削減や少人数学級の実現策は、今後数年の教育行政の重要課題となります。特に平均残業時間30時間目標については、達成できるかどうかが将来の制度設計に直結します。実効性ある業務削減(部活動の地域移行や校務支援員の配置拡充等)を国が財政支援しつつ進められるかが問われるところです。
教員不足・志望者減への対応
処遇改善の効果として教員志望者数の増加や現職教員のやる気向上が期待されますが、達成には時間がかかるでしょう。給与以外にも、勤務環境の改善(業務アシスタント拡充、ハラスメント対策など)やキャリアパス構築など総合的な支援が求められています。
教育の質確保
給特法改正の究極の目的は、教師の質と量を確保し、子どもたちにより良い教育を提供することにあります。調整額引き上げは手段の一つに過ぎず、これを契機として教員が「働きやすさ」と「働きがい」を両立できる職場環境を整備していくことが重要です。
最後に
今回の改正は50年ぶりの第一歩であり、歴史的な出来事であることは間違いありません。しかし依然として課題は残り、教育現場からは「問題の構造自体は解消されていない」との声も上がっています。
私個人としては
「教職調整額が上がっても、結局は働かせ放題じゃん」
と思う反面、
「Time is Moneyの感覚がないのに残業代って、都合よくない?」
とも思います。
一般的に、働いた対価としての給与が支払われるわけですから、働かせ放題には反対です。しかしながら、教員の立場から見ても、今のまま残業代を支給するのは難しいと思います。
行政側の意見と教員側の意見が対立しています。
しかしながら、「未来の教員、子どもたちのための改革」という目標は一致していると信じています。
双方の意見をすり合わせ、よりよい改革になることを願います。


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