小中学校の授業時間数削減、その目的は?

みなさん、こんにちは。

最近、教育現場で大きな話題となっているのが、小学校と中学校の年間標準授業時間数を削減する、という中教審での議論です。ニュースなどで目にされている方もいるかもしれませんね。この議論は、私たち教員の日々の働き方や、子どもたちの学びの質に直結する、とても大切なテーマです。
今日はこの話題について考えていきたいと思います。

目次

なぜ今、授業時間を減らす議論が進められているのか?

この議論の大きなきっかけは、教員の長時間勤務や、教科書の内容が肥大化しパンク寸前になっているという日本の教育現場が抱える現状にあります。

教員の過重労働

 現在、教員は授業準備だけでなく、児童生徒への対応、事務作業、部活動指導など、多岐にわたる業務を抱え、過重労働の状態にあると言われています。 中教審も、教員がゆとりを持って仕事に取り組めるよう「余白の創出」に重点を置いています。

教科書の肥大化

約50年前と比べて、小学校の教科書はなんと約3倍、中学校でも約1.5倍に増加しており、限られた時間でこれら全てを教えきることは、教員にとっても子どもにとっても大きな負担となっています。

超過授業の実態

多くの学校で標準授業時数を超過する授業が行われてきたことも問題視されています。2023年には中教審の特別部会が緊急提言を行い、年間1086コマ以上の過密な教育課程を編成している小中学校が全国で3校に1校以上存在することを指摘し、見直しを求めました。

授業時間削減で期待されるメリット

一見すると「勉強時間が減ることで大丈夫なのだろうか」と心配になるかもしれませんが、実は様々なメリットが期待されています。

教員の負担軽減と質の向上

教員に時間的な余裕が生まれることで、一つひとつの授業をじっくり準備したり、研修に参加したりする時間が増えます。これにより、児童生徒へのきめ細やかな指導や個別支援がしやすくなると期待されています。教員が余裕を持って授業研究や教材研究に取り組める環境が整備されることは、教育の質向上に繋がるでしょう。

授業以外にもやるべきことはたくさんあるのに、勤務時間のほとんどすべてが授業で終わることが一般的ですからね。生徒が帰ってから、勤務時間を超えて仕事をすることが前提の現状は改善してほしいです。

子どもの学びの充実と健全育成

授業時間にゆとりが生まれることで、詰め込み型ではない、深い理解のための学習や探究的な学びに時間を充てられる可能性があります。また、授業密度が適正化されれば、子どもたちが最後まで集中して授業に臨みやすくなるとの指摘もあります。適切な休息や睡眠時間を確保し、健全な生活リズムを維持できるようになることも期待されます。

柔軟なカリキュラム編成

学校ごとの実情に応じた柔軟な教育課程編成が可能になります。例えば、「調整授業時数制度」(仮称)の導入が提案されており、これにより学校は児童生徒のニーズに合わせて時間配分を工夫し、個別最適な学びの実現に繋がると考えられています。複数の教科にまたがる内容を一度の学習で複数教科分の履修とみなす「ダブルカウント」や、学習内容の一部を選択制にするといったアイデアも出されています。

教師・生徒の心身の健康

授業や業務に追われるあまり、これまで休憩時間や給食時間が削られたり、児童生徒の放課後の時間が短縮されたりする傾向が見られました。最近では、勤務時間内に生徒が下校できるようにと、昼休みがどんどん短くなっています。
授業コマ削減によって学校生活に余裕が生まれれば、子どもたちが適切な休息を確保し、健全な生活リズムを維持できるようになるでしょう。教員にとっても、肉体的・精神的なゆとりが生まれることでバーンアウト防止や離職防止に繋がり、安定した教育体制の維持に役立つと考えられています。

懸念されるデメリット

もちろん、良いことばかりではありません。懸念点もしっかりと見ていく必要があります。

学力低下への不安

最も大きな懸念は、子どもの学力低下を招くのではないかという点です。授業時間が減れば扱える学習内容も減る可能性があり、「ゆとり教育」で指摘されたような基礎学力の低下が再び起こるのではないかと心配する声があります。

教育水準の低下と競争力への影響

授業時間削減による学力低下への懸念は、さらに広い視野では教育水準の低下や国際的競争力の減退につながるという指摘もあります。
日本では全国学力テストの結果を都道府県間で競い合う風潮も根強く、授業時間に余裕ができても結局テスト対策の詰め込みに使われてしまうのではという懸念もあります。

教員の指導やカリキュラム運営の困難

授業時間が短縮・削減されると、指導法の見直しやカリキュラム調整が必要となり、現場には新たな負担が発生する可能性があります。特に経験の少ない教員にとっては、短い時間で授業をまとめるのが大変だという指摘もあり、授業構成力が問われることになるでしょう。

カリキュラムの不均衡・地域差

授業時数の削減と裁量拡大は、学校ごとの対応の差を生む可能性があります。学校によっては、せっかく生まれた余裕時間を創意工夫に使わず、従来以上のテスト対策やドリル学習に充ててしまうケースも考えられ、地域間や学校間で教育の質にばらつきが出てしまう恐れがあります。

賛成する立場

教職員や教育有識者の声

「現状の授業時数では教員が限界であり、このままでは教育の持続可能性が危うい」という切実な声があります。教員採用倍率が低下し教員不足が深刻化する中、「教員が子どもと関わる余裕を持つ」ことが教職の魅力向上策の一つだと主張されています。

保護者の期待

保護者の中にも約4割が賛成しており、「新たに生み出された時間で探究学習などプラスアルファの取り組みが増えること」や「授業が最後まで集中して受けられるようになること」に期待する声が寄せられています。

「余白」を活かした新たな学び

金融リテラシーやICT活用、生成AIへの対応など、現代社会で新たに身につけるべき知識が増えている中で、「全てを詰め込むのではなく、各地域・学校が臨機応変に教える内容を選択できる余白を設けるべき」という意見も出ています。

反対する立場

学力低下への不安

最も強く挙げられているのは、「ゆとり教育」での反省を踏まえ、授業時間を減らすことが再び子どもの学力低下を招くのではないかという懸念です。

現場教師の視点

「時間を減らされても教える内容は急になくならない。結局やることは変わらず時間だけ少なくなるなら、現場の負担は増える」との指摘があります。

教育格差の拡大懸念

学校裁量による教育効果の差が生まれ、地域間や学校間で教育格差が拡大する可能性も懸念されています。

おわりに

私は、この議論は「量より質への転換」を問うものだと感じています。これまでのように、「長い時間、たくさんやればいい」とは異なり、「持続可能な環境」を作っていこうという意図が感じられます。

しかし、授業の時間が短くなったとしても、空いた時間に「学校裁量」が増えれば、結局は、「何をしたらいいの?」「準備に時間がかかる。」といった具合に、新たに考えたり用意したりすることが増えることによって、負担が増える可能性もあります。
そうなると、学校でドリルを購入して、「学力補充」みたいに、みんなでテスト対策に取り組む時間が増えることも容易に想像がつきます。

これまで日本は、良くも悪くも、「これに従って進めましょう」というものがありました。それがなくなることは、諸刃の剣になりかねません。

私個人としては、「授業が短くなるなら、その分早く下校すればいい。」と思っています。
私はこれまで複数の国でホームステイを経験したり、学校の見学をしたりしてきましたが、日本みたいに暗くなる時間まで学校にいる生徒はほとんどいませんでした。「日本って、学校にいる時間が長すぎなんじゃない?」と感じます。
学校以外で学べることもたくさんあります。もっと子どもたちを自由にすることも大切なのではないでしょうか。
放課後に虫を採ったり、趣味の木工に時間を使ったりしている子どもは、本当に生き生きとしています。

小中学校の標準授業時間数削減の議論は、学力低下への懸念と、教員の働き方改革や教育の質の向上という期待が交錯する、非常に複雑な問題です。
今回の改革が、単なる時間削減で終わるのではなく、子どもたち一人ひとりがより深く学び、教員がより「働きやすさ」と「働きがい」を感じられる教育現場へと繋がることを心から願っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

サイト名の由来は「〜の場を足す」。
「学習の場」「授業の場」を世の中に増やしていくことを目指しています。

忙しい先生方の授業準備を少しでも楽に、そして生徒たちの学びが深まるよう、日々の実践や自作サービスをシェアしています。
私自身もまだ勉強中です。現場で役立つ「プラスアルファ」をお届けしながら、これからの教育を一緒につくっていけたら嬉しいです。

コメント

コメントする

目次